引っ越しが楽だった理由に、家電製品のような生活器具をまったくもたなかったということがあります。冷蔵庫、洗濯機、テレビが普及するのは、ここ四〇年ほど前からのことにすぎません。こうしたことでの引っ越しの楽さは、物を多くもたない暮らし、つまりは生活の貧しさということができます。今は物をもちきれないほどもった暮らしだから、めでたしめでたし、と言えますか。それほど気楽になれないのではありませんか。どうやら物の多さにふりまわされている暮らしのようにも思えてなりません。
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物を多くもたなかった時代の暮らし、そこから学ぶべき点もあると思うのです。畳敷きの部屋で座って生活することを、床座の生活と言います。立って生活する椅子座の洋風化生活以前の日本人の暮らしは、すべて床座でした。畳敷きということはベッドが不要、布団を敷けばどこにでも寝られます。食事も床座なら、ちゃぶ台を置くだけで用が足ります。ちゃぶ台以前の時代もありました。一人ひとりが、自分の箱膳を使いました。寝・食を生活の二大要素とすれば、布団とちゃぶ台だけで暮らせた家だったのです。