反抗的な受講生には、対抗意識を燃やして教官の権力を振りかぎして、受講生に対してついつい反抗的になってしまう私であるが、特別うるさい受講生に対しては、黙ってハンコを押してしまう場合もある。例えば、自動車教習所で運転を習おうという時にわざわざダブルの黒ブレザーに金ボタン、白いシャツにイタリアブランドの派手なネクタイをしめているような、どこかの社長、重役などというウルサ型に対しては、何か一つ注意すれば、十も二十も屁理屈や反論が返ってくるから、そういうのにはあえて逆らわないことにしているのだ。こういうタイプは学生気分に戻って半徹夜状態で道路交通法を丸暗記したり、ドライブテクニックのマニュアル本などをしっかりと読みこなしているから、理屈で攻撃されたら私の方が立場が悪くなるかもしれない。逃げるが勝ちである。「バイバイ」と二つ返事で相手の言い分を聞いてやり、あまり逆らわずにハンコを押すことを考えた方が、後で警察の元幹部で権威には人一倍弱いという管理者のところへねじ込まれたりされる心配がないからだ。だが、実はこんな理論で教官をやっつけようなどという不心得者は、最後にドンデン返しを食うことがあるのだ。なぜなら、担当した教官がみんな黙ってハンコを押し、検定員までが逆らわずに合格印を押して、めでたく仮免許をもらったとしても、最後に試験場で行われる学科試験に教習所での詰めの甘さが反映して、結果的に不合格となってしまうことがままあるからだ。こんな受講生も、まともに教習所へ通うことの意味を正しく理解していないという点では、そこら辺の不真面目な若者と変わらないのである。