デジタルカタログは紙という資源を使わない分、材料となるパルプもインクも要らないので、まず印刷所がお払い箱となる。注文が来るのを待つ間に本を置いておく倉庫が必要ないため、取次の存在理由がなくなる。店頭販売しなくていいので、本屋が潰れる。そして、こういったコストがかからない分だけ紙の本より安くできて当たり前、という読者の期待があり、とても紙の本と同じ値段で売るわけにはいかなくなるだろう、という出版社側の計算がある。もっと深層心理的な、つまり今までのビジネスシステムが根底から覆ることへの不安があることも確かだ。そして2009年10月、あわや、その値崩れが現実になるかと思われる事態になった。毎年秋のこの時期になると、アメリカではクリスマスシーズンに向けて各出版社その年イチオシの本が出そろう。本はよくクリスマスのギフトとして贈られるため、一年を通四じ、この年末の時期に最も売り上げが多い。クリスマスシーズンに売り上げが伸ばせないとその年が赤字、というところも少なくない。ところが2009年、アマゾンに対抗して紙の本を9.99ドルに値下げする量販店が現れた。アメリカ最大の量販店チェーンである「ウォルマート」が、スティーブンーキングの新作やマイケルークライトンの遺稿など、その秋に人気が出そうなハードカバー宍の本10冊を、それぞれ9.99ドルという前代未聞の安値で前売り注文を取り始めたのだ。