住み手にとっての「良い住まい」を本来、建物の断熱方法として何がベストなのかは、一概に決められるべきものではないでしょう。建物がどのような構造材でできているのか、その地域の環境がどうなのか、あるいはコストの問題や施主のこだわりなど、さまざまな要素があるでしょう。外断熱先進国ともいうべきドイツへ視察研修に行った際、専門家に「外断熱と内断熱のどちらが優れているか」と質問したことがあります。答えは、「どの工法がベストかは問題ではない」というものでした。重要なのは工法ではない、住居はそこに住む人やオーナーのことを第一に考えなければならないからというのです。さらに、増えつづける住宅が恒常的な地球環境を害さないというのも、環境への配慮を重視している近年のヨーロッパで特に大きな関心事としてとらえられています。つまり、住宅を考える場合、「人や環境のために、真に良いものを総合的に求める」ことが大前提なのです。一方、戦後復興と核家族化の道を歩んできた日本では、マンション建設のそもそものスタートが「とにかく住宅供給を早くしなければいけない」という流れの中にありました。そこにはヨーロッパのような、「まずは住み手のことを考える」という発想はなく、居住者にとっての快適性や環境問題はないがしろにされてきました。しかし高度成長やバブル経済が終焉を告げ、「量よりも質」を、「物よりも心」を重視する時代への端境期であるいま、日本人の住まい観もより本質的なものに移行しつつあるのは確かです。その歩みはゆっくりですが、着実に外断熱マンションが建ち、売れるようになった現状にも見て取れます。