患者の闘う気持ちが風化したところで癌は攻撃を再開する

2012-02-05

今にして思えば、この時こういう決心をしたのに二年後の再発の時も同じようなことを考えている。忘れたわけではないけれど、決心が風化していったのだ。癌の手口はこれだ。二年間、何事もなく潜行していて患者の闘う気持ちが風化したところで攻撃に出る。癌の二回目の攻撃は、一回目のインパクトと実はあまり変わりはないはずなのに、受ける側にとっては隙を突かれて慌てふためくことになる。手術後一〇日目に最終病理診断が報告された。結果は、我々の予想をはるかに上回る進行癌であった。腫瘍のサイズ自体は小さかったものの、漿膜面(癌は粘膜に発生し、大きくなるに従って深く浸潤し、漿膜面に露出するようになる。胃癌では、漿膜に癌が露出すると癌が腹膜に転移し、いわゆる癌性腹膜炎として再発する可能性が高まる)に癌が露出しており、所属リンパ節転移も陽性であった(胃に近い1群リンパ節に転移が三個陽性であった)。最終ステージは?A。これまでの国内での統計学的な五年生存率は五〇%程度であった。つまり、簡単にいえば、二人に一人は再発して、癌で死ぬということになる。この結果を医師には正確に伝えたが、彼は取り乱すことは決してなかった。あたかも、進行癌であることを予想していたかのようにみえた。病理の結果を奥さまにも、私から話そうかと尋ねたところ、自分から伝えるから大丈夫だと応えた。後から聞いた話である。この麻酔(痛み止め)は背部痛のレスキューの頼みの綱であり、痛みがひどい時はナースコールを押して注入量を増量してもらっていたのだが、実はここ数日、薬は入っておらず、ただの生理食塩水であったとのこと。何ということだ。己れの依存性を恥ず。だらしのない!