心を贈る手紙

2012-01-23

大変にありかたかったことがありました。これはちょっと悲しい思い出であります。私が最初に勤めました京都大学には、学内に保育園がありました。私がそこの保護者会長をしておりましたときに一緒に保護者会の活動をしましたお母さんの子どもさんが、自転車に乗っていて転倒したところに自動車が来てしまったという不幸な事故がありました。私は、そのとき下の子どもがおなかにいて、余りのショックにお葬式にも行けなかったという悲しい出来事でした。

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そこで手紙を添えてお香典を贈りました。その後にそのお母さんから長い手紙が届きました。その子どもさんを産むときどういう思いだったか、どういうふうに育ててきたか、そしてその子が自動車事故に遭ったその日は実はYMCAの活動で出かけていたということ、そのYMCAの活動になぜ子どもが参加したかというふうなことだとか、そういう子に対する親の思いや、あるいはその思いをどんなふうにして社会的に広げていったかという考えとか、日本の道路行政というのがどんなに悪くて、道路がどんなにでこぼこだったか、だから子どもがひっくり返ったというお話だとか、あるいは皆さんから集まったお香典をどういう社会的団体に寄附したかということを全部自分の筆でくわしくお書きになっていました。そういういろんな思いをずっと長いお手紙に、もちろん全員に直筆というわけにいきませんから、印刷して届けられました。私は手紙は保存することにしています。贈り物で暮らしに要らないモノはバザーに出してしまうのですが、手紙は心ですから手紙だけは全部きれいに残しています。これはその中でも忘れられない思い出の手紙です。